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中国軍機は複数回旋回後に領空侵犯か

NHK

中国軍機は複数回旋回後に領空侵犯か 閣僚発言相次ぐ

26日、長崎県沖の上空で領空侵犯した中国軍機は、周辺の上空を複数回旋回したあと、領空に侵入していたことが関係者への取材で分かりました。防衛省が目的などについて分析を進めています。中国外務省は「中国側はいかなる国の領空にも侵入する意図はない」と強調しました。
これについて閣僚からの発言も相次ぎました。

防衛省によりますと26日午前、中国軍のY9情報収集機1機が長崎県五島市の男女群島沖上空で日本の領空内を飛行し、中国軍機による領空侵犯が初めて確認されました。

情報収集機は、中国大陸の方向から九州の方向に向けて飛行し、男女群島南東沖の上空で旋回したあと、領空侵犯したということですが、旋回は複数回行われていたことが関係者への取材で新たに分かりました。

この間、航空自衛隊の戦闘機が領空に接近しないよう無線で通告や警告を行ったものの、情報収集機は領空内に侵入しておよそ2分間飛行し、その後も1時間半余りにわたって周辺上空で旋回を続けたということです。

防衛省が目的などについて引き続き分析を進めています。

緊急発進 中国が最多

 

防衛省によりますと、今年度の中国機に対する航空自衛隊のスクランブル=緊急発進の回数は、7月までの4か月で合わせて177回と、全体のおよそ73%を占め、国別で最も多くなっています。

26日領空侵犯したY9情報収集機は今年度は26日を含めて少なくとも3回の飛行が確認されています。

このうち4月1日には、東シナ海上空から沖縄本島と宮古島の間を南下して太平洋上空で反転したあと、同じコースを戻るようにして飛行しています。

また8月3日には、東シナ海上空から沖縄本島と宮古島の間を南下して与那国島沖の上空で旋回したあと同じコースを戻るようにして飛行しています。

この2回の飛行では、いずれも領空侵犯はありませんでした。

内倉空幕長「厳格厳正 慎重に総合的に判断して的確に対応する」

 

航空自衛隊トップの内倉浩昭航空幕僚長は記者会見で「領空は国際法上、排他的な主権を持つものであり、他国は尊重する必要がある。領空侵犯は主権の重大な侵害であるだけでなく安全を脅かすものであり、全く受け入れることができない」と述べました。

その上で「中国軍の空における活動の拡大、活発化というのは総じてあると思う。関連する法律や規則に基づいて、厳格厳正、慎重に総合的に判断して的確に対応する」と述べました。

今回の領空侵犯が意図的なものだったかどうかについては「相手方の意図は測りかねるので、答えは差し控えたい」と述べました。

外務省 中国側に抗議

外務省の岡野事務次官は26日、中国大使館の施泳臨時代理大使を外務省に呼び、極めて厳重に抗議するとともに再発防止を強く求めました。

また、鯰アジア大洋州局長も、東京都内で会談した中国外務省の劉勁松アジア局長に抗議しました。

木原防衛相「警戒・監視 対応に万全を期す」

 

木原防衛大臣は記者会見で「近年、中国によるわが国周辺での軍事活動が、ますます拡大・活発化している傾向がある。中国軍機の行動の意図や目的は分析しなければならないが、現時点で、確たることを答えるのは困難だ。防衛省・自衛隊による警戒・監視を含め、対応に万全を期していく」と述べました。

上川外相「日本の領土 領海 領空 断固として守る」

 

上川外務大臣は、記者会見で「主権の重大な侵害であるだけでなく、安全を脅かすものであり、まったく受け入れることはできない」と述べました。

その上で「わが国としては、日本の領土、領海、領空を断固として守るという決意のもと、主張すべきは主張しつつ、今後も冷静かつきぜんと対応していきたい」と述べました。

林官房長官「主権の重大な侵害 極めて厳重に抗議する」

 

林官房長官は27日の記者会見で「主権の重大な侵害であるだけでなく安全を脅かすもので、全く受け入れられない。極めて厳重に抗議するとともに、再発防止を強く求めた」と強調しました。

その上で「中国軍機の行動や意図、目的などについて確たることを答えるのは控えるが、わが国周辺での軍事活動は拡大、活発化の傾向にある。強い関心を持って注視し、警戒・監視と対領空侵犯措置に万全を期す」と述べました。

また日中関係への影響については、具体的な言及を避けつつも「建設的かつ安定的な日中関係の構築を双方の努力で進めていくのが岸田政権の一貫した方針で、さまざまなレベルで意思疎通を行う」と述べました。

一方、2023年に運用を開始した日中両国の防衛当局間のホットラインが活用されたかについては「事柄の性質上、答えを控えたい」と述べるにとどめました。

自民 渡海政調会長「日中両国の緊張を高める」

自民党の渡海政務調査会長は党の会合で「日中両国の緊張を高めるもので誠に遺憾だ。厳重に抗議したい。政府には引き続ききぜんとした対応と国民の安全確保に万全を期すことを求めたい。政務調査会としても政府と緊密に連携し、事態を注視したい」と述べました。

自民 藤井外交部会長「極めてゆゆしき事態 断じて許されず」

自民党の外交部会と外交調査会の合同会議では、中国軍機による日本の領空侵犯についての発言が相次ぎました。

冒頭、藤井比早之・外交部会長は、「極めてゆゆしき事態で、断じて許されず、政府にはきぜんと対応してもらいたい」と求めました。

また、出席した議員が、中国側の意図をどう分析しているのか質問したのに対し、外務省の担当者は、現時点で断定は難しいとしながらも「中国軍機は直前の警告にも関わらず、領空内を2分間、飛行しているので、日本側の反応を見ようとしたのではないか」と説明しました。

中国外務省報道官「いかなる国の領空にも侵入する意図なし」

 

中国外務省の林剣報道官は27日の記者会見で「中国の関係部門が現在、状況を確認しているところだ」とだけ述べ、具体的には言及しませんでした。

そのうえで「強調したいのは中国側はいかなる国の領空にも侵入する意図はないということだ」と述べました。

また、外務省の岡野事務次官が中国大使館の施泳臨時代理大使を外務省に呼び、極めて厳重に抗議するとともに再発防止を強く求めたことについては「双方は既存のチャンネルを通じて意思疎通を続けている」と述べました。

専門家「日本に対し挑発行為を行った可能性」

 

中国の軍事情勢に詳しい笹川平和財団の小原凡司上席フェローは日本の領空侵犯が確認された中国軍機について「中国は常日頃から自衛隊や米軍の情報をとるためにさまざまな哨戒活動を行っている。今回は日本の防空システムの情報をとろうとした可能性がある」と指摘しました。

一方、今回の領空侵犯が意図的なものだったのか、パイロットの操作ミスなど偶発的なものだったのか、現時点では判断するのは難しいという考えを示しました。

その上で中国外務省が27日の記者会見で領空侵犯に具体的には言及しなかったことから、今回の領空侵犯が意図的なものだった場合、「現場の指揮官あるいは、パイロットが故意に日本に対して挑発行為を行った可能性がある」と分析しています。

そして「今回の領空侵犯が実は事故で、日本との対立は望んでいないのかどうかは、今後、中国軍がどのような動きをするのかをみればある程度理解できると思う」と述べ、今後の中国軍の動きを注視する必要があるとしています。

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